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オートバイメーカーは、今のカスタムバイクシーンをどう見ているのか?

XSR700

カスタムバイクの超人気サイト「BIKE EXIF」に、「Q&A: A MANUFACTURER’S VIEW OF THE CUSTOM SCENE(Q&A:カスタムシーン、メーカーの見解)」という興味深い記事がアップされています。

「ここ数年、ヤマハヨーロッパ以上にカスタムバイクにコミットしたメーカーはいない」といった口上から始まるこの記事は、ヤマハヨーロッパでマーケティングコーディネーターを勤めるクリスティアン・バレリ氏(35)を相手に、カスタムバイクシーンの影響、XSRプラットフォームの開発、そしてカスタムバイクシーンはどこに向かうのかといった内容をQ&A形式で記事にしています。
いまのカスタムシーンに少しでも興味がある人には、おもしろい記事だと思います。
長文の記事ですので、いくつかのQ&Aを抜粋して紹介したいと思います。(※正確な翻訳にはなっていないので、気になる方は元記事を当たってください。下記のQ&Aでは、[Q]はBIKEEXIFのなかの人を、[A]はバレリ氏を表しています。)

ちなみにXSR700やXSR900をBIKE EXIFで紹介したとき、メディア側には好評だったそうですが、読者にはそのスタイリングが賛否両論だったそうです。



Q:数年前まではオートバイに全く興味のなかったあなたの友人が、最近は興味を持ち始めているという話をされましたね。それはカスタムバイクシーンの成長が関係してますか?

A:そう!ここ数年、人々は古いバイクを使ってカスタムを始めました。そしてそれに(人々を惹きつける)可能性を見ました。流れはこんな感じです。

私も同様です。10年前に購入したオールドBMWを持っていたので、私はガレージでオールドBMWをカスタムし、たくさんの楽しい時間を過ごしました。
ただ、それに乗って走りに出たとき、それは遅く、ブレーキも効かない、ただの古いバイクでした。私はバイクに乗ることが大好きで、バイクはただ愛でるためだけのものではなかったから、私にはよりフレッシュで新しいバイクが必要だと分かりましたが..。

また、私たちはカスタムバイクシーンに、新規ユーザーが興味を持つ可能性を見ました。それは、このカスタムシーンはファッションでもあるからで、ファッションというのは悪い意味ではなく、若い人たちを惹きつけるにはそういったものがなければならないでしょう?

20年前は150馬力のパワフルなオートバイがクールでしたし、皆の(興味の)出発点もそこでした。それは最早そうではありません。あなたは公道で使いきれないそんなパワー(150馬力)を求めていないですし、おまけに危険で、警察との関わり合いも多くなります。だから少しスローダウンするほうがいいんです。(今日の)カスタムバイクシーンはこの流れにぴったりです。


Q:MTのプラットフォームでより多くのヘリテイジモデル(ネオレトロ)のバイクを期待してもいいですか?

A:はい、私たちは幾つか考えています。

Q:教えてもらえますか?

A:教えられますが、その後に私はあなたの口封じをしなければいけなくなります[笑]。

Q:まあ、私は推測することができます。クラシックなスクランブラーのシーンが再び爆発的人気になっています。それはあなたが考えているものですか?

A:もちろん、私たちはスクランブラーについて考えています。また、Yard Builtプロジェクトでは、カスタムビルダーがこのベース(XSRのこと)を使用して、スクランブラーカスタムやオフロードバイクのようなカスタムを製作しています。私たちはいつもYard Builtをマーケティングツールとしてだけでなく、シーンがどこに向かうのかを見るために使用しています。そして、私たちはプロジェクトをとおして、昨年のバンカー兄弟(Bunker Custom Cycles)のように、多くのビルダーがXSR700をベースにスクランブラーテイストのカスタムを作ったことを知りました。「シーンはこの方向に向かっているのか」というシーンからのインプットと、起こっていることから考えています。だから(スクランブラーモデルは)私たちが検討しているものです。


Bunker Custom Cycles XSR700 スクランブラーカスタム


Rough Crafts XSR700 スクランブラーカスタム [Double-style]


Deus Ex Machina XSR900 スクランブラーカスタム [Swank Rally]


Q:もしかしたらMT-03でXSR3を作りますか?

A:もしかしたら、それは良い機会かもしれません。このシーンは成長しており、それは新規ユーザーが増えていることを確認できる唯一の方法です。

Q:顧客層が若くなっているのを見ましたか?

A:はい。このシーンで顧客層は若くなってきています。


Q:ドゥカティのデザートスレッドは、ドレスアップされたオンロードバイクではなく、適切なデュアルスポーツバイクとして賞賛されています。私たちは以前、XSR700のエンジンがオフロードにどれほどうまく対応できるかについて話しました。レトロなスクランブラースタイルで、実際にオフロードのパフォーマンスを発揮すると思いますか?

A:その考えはおもしろい。今のシーンを見ると、カフェレーサーで始まり、スクランブラーに(トレンドが)変化しましたが、スクランブラーでは不十分なことは明らかです。彼らはもっとオフロードに行きたいと欲している。スクランブラーはオフロードにはならないものですが、彼らは本当のデュアルスポーツを求めています。私が言ったように、カスタムビルダーの中にはオフロードバイク(適切なオフロードバイク)を、私たちが提供するベース車両で製作し始めている人もいます。だからトレンドになっています。

人々がニッチな分野に目を向けると、そのニッチな分野は成長しさまざまなやり方で動き始めることがわかります。その1つがもちろんオフロードであったり、もしくはレースであったりします。[Sultans Of Sprint]や[Glemseck 101]を見ると、オンロードでのパフォーマンスとオフロードでのパフォーマンスは分けられています。私たちはこれらの2つ(オンロードとオフロード)の世界を持っており、どこに行くのか把握しなければなりません。


Q:Yard Builtは、おそらくオフィシャルカスタムプロジェクトのなかでも最多のOEMカスタムバイクを製作したプロジェクトです。ここにくるまではどのような道のりでしたか?

A:もともとは、Yard Builtと呼ばれる前は、2011年にスタートした[Hyper Modified]プロジェクトが始まりでした。最初のカスタムはローランド・サンズ、ルドヴィク・ラザレス、マーカス・ウォルズが製作したVMAXでした。
当時、私はヤマハ・イタリアで働いていて、この分野を担当していたので覚えています。私たちはEICMAで、カスタムエリアに専用ブースを構えていました。そして、私たちはそれをやる最初の会社だったことを覚えています。周りにいるのはすべてカスタムビルダーで、私たちを見て言いました「あんたヤマハだろ!? ここで何やってんだ??」。
その1年後にTMAXでも同じ[Hyper Modified]プロジェクトおこない、それからYard Builtへと大きく発展していきました。

私たちにとっては、マーケティング目的だけでなく、カスタムビルダーとコンタクトすることも非常に重要です。彼らは、毎日カスタマーと、このカスタムシーンにいる人々とつながっているからです。だからカスタムビルダーはカスタマーが何を望んでいるのかを正確に知っています。私たちはオフィスいて、何が起こっているのかを見ることはできますが、現実は異なります。


Marcus Walz VMAX [Hyper Modified]


Q:Yard Built special(Yard Builtカスタムマシン)を製作する際にあなたはビルダーにどんな手配をしていますか?

A:それはプロジェクト毎に大きく変わり、カスタムビルダーが誰であるかに大きく左右され、カスタムビルダーのアイデアに大きく左右されます。話はまず「どのバイクを使いたいですか?」から始まります。私達はビルダーが何も感じないバイクを強制したくありません。(強制すると)良い結果はでないからです。

そこで、私たちは話を始めます:「あなたのアイデアは何ですか、あなたの計画は何ですか?あなたがカスタムしたいバイクはどのバイクですか?」そして、話し合いを始め、ビルダーがどこまでやりたいかを確認します。

Yard Builtプロジェクトの約束のひとつに、バイクはストックフレームとストックエンジンに留まるべきだというものがあります。最終的には、バイクがカスタマーのために何ができるのかを示す必要があるため、私たちにとってはこれは必須です。カスタムがエクストリームすぎると、私たちには何の意味もありません。

そこで、私たちは彼らと話し合い、フレームとエンジンに基づいて、彼らが何をしたいのかを見ていきます。これに基づいて、彼らがどこまでカスタムすることができるのか、私たちの予算が必要な場合、サポートなし出来る場合。時にはパーツを提供できるパートナーがいることもあったり、オプションのアクセサリーなどは無料で使うことができます。

その後、彼らはカスタムバイクを保管します。通常、私たちはカスタムバイクをほぼ1年間借りて、ショーや活動に使用します。その後、カスタムバイクはビルダーに帰ります。ビルダーはカスタムバイクを保つことも、売ることも、スクラップにすることも、好きなようにできます。

Q:[Wrenchmonkees]や[JVB-Moto]のようなビルダーは[Kedo]などの取引先を通じてボルトオンパーツを販売しています。これらのビルダーをサポートするために、自社で開発したパーツとどのようにバランスを取っていますか?

A:事実、アクセサリーを開発することは良いことです。それはビジネスです。しかし、私たちはアクセサリーに厳しいルールのテストをたくさん行います。
言ってみれば、カスタムビルダーが、私たちができること以上に、カスタムパーツを作ることは簡単です。私たちはビルダーに「このパーツを作ってください」と言います。これはバイクに魅力を与えるからです。たとえば、[JVB-Moto]はXSR700で素晴らしい仕事をしていて、たくさんのキットを販売しています。彼らは私たちができないことをやっているので、私たちはこれについて満足しています。


JVB-Moto XSR700 スクランブラーカスタム [Super7]


Q:私達はカスタムビルダーが旧いバイクではなく、高性能な現代のバイクをカスタムしているのをどんどん目にしています。これは時代の兆候ですか?

A:これは正常なプロセスです…古いものからスタートしますが、古いものは維持するための手間やスキルが必要になります。これはオールドBMWを買ったときの私がそうでした。私は自分のガレージでBMWをカスタマイズするのはとても幸せでしたが、走りに行ったとき、すべてが違ってきます。どこでも燃料が漏れ、ブレーキが効かず…それだとどこにも行けません。「OK、オールドBMWはクールだ。けど、私には走ることができるものが必要だ。」
簡単に走ることができて、ガールフレンドと一緒に湖に行くことができて、特に問題も無いバイクじゃないと始まりません。「ベイビー、押して、押して、お願い」という羽目になります。

もしくは、本物のメカニックになって、「私はすべての問題を直すことができるので、私は旧いバイク欲しい」と言うこともできます。しかし、そんな人はバイク乗りの10%ぐらいで、残りの90%はただ乗りたい人、ただ走りに行きたい、機械的なことについて大騒ぎしたくない人です。ある意味で、私たちはこの方向に向かっています。


出典:BIKE EXIF「Q&A: A MANUFACTURER’S VIEW OF THE CUSTOM SCENE」