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Mark Guiliana (マーク・ジュリアナ) ジャズカルテット [Jersey](ジャージー)

マーク・ジュリアナ

約2年ぶりにMark Guiliana(マーク・ジュリアナ) Jazz Quartetの新作が発表されました。マーク・ジュリアナは新世代ジャズのトップを走るドラマーで、エレクトロニック・ミュージックやベース・ミュージックからの影響をジャズのフィルターを通して消化した、その音楽性や演奏が話題になったミュージシャンです。

マーク・ジュリアナとは何者か?そんな疑問に答えるかのように、国内外問わず色んなメディアで引用されるタイムアウトロンドンのコピーがあります

ハード・バップ時代のドラムマスター、エルヴィン・ジョーンズとアート・ブレイキーを1980年代のRoland 808ドラムマシンに追加し、その結果をJ Dillaで割って、スクエアプッシャーのパワーを掛けるとどうなる?
アンサー:マーク・ジュリアナ。


レトロでクラシックな音楽を新たなジャンルのものに変えて復活させる

2009年に発売されたロバート・グラスパーの名盤「Double Booked」辺りを皮切りに、2015年ぐらいまで特に盛り上がりを見せた、「Revive Music」(※The Rootsのクエストラブが主催するOkayplayerのオンラインジャズジャーナル)でよく紹介されるようなリバイブ系のジャズも、最近は落ち着きをみせ始め、1度整理というか少し振り返る感じが出てきました。

レトロでクラシックな音楽を新たなジャンルのものに変えて復活させるという意味を込められた「Revive Music」。新たなものに変身させる原動力になったのはギターやピアノ、ましてやエレクトロニクス機材でもなく、ドラムルネッサンスとも喩えられるべき新世代ドラマー達の躍進でした(筆頭となったクリス・デイヴはそんなに若くなかったですが)。

ドラムルネッサンスを牽引したのはクリス・デイヴ、ジャマイア・ウィリアムス、マーカス・ギルモア、リチャード・スペイヴン、そしてマーク・ジュリアナ。

マーク・ジュリアナ
マーク・ジュリアナはその革新的で創造的なスタイルが、ニューヨークタイムズ紙や様々なメディアで、ドラミングの未来として賞賛されています。
1980年9月生まれ、安心の乙女座。
小さい頃はMTVを見て育ち、ニルヴァーナやレッド・ホット・チリ・ペッパーズ、パール・ジャムが好きだったようです。16、17歳の頃にジャズに目覚めてからはマイルス・デイビスの60’s黄金クインテットにハマり、やっぱりトニー・ウィリアムスに夢中になります。ただ時は90年代後半、スクエアプッシャーが世界に衝撃を与えていました。
「スクエアプッシャーを初めて聞いたとき、私はトニー・ウィリアムスを初めて聞いたときと同じ気持ちになりました。」


マーク・ジュリアナのオールタイムフェイバリットアルバム

John Coltrane(ジョン・コルトレーン): A Love Supreme(至上の愛)

Art Blakey(アート・ブレイキー): Free for All(フリー・フォー・オール)

Bob Marley&The Wailers(ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ):Live at the Roxy

Miles Davis(マイルス・デイビス):Nefertiti(ネフェルティティ)

Roy Haynes(ロイ・ヘインズ): Out of the Afternoon

John Coltrane(ジョン・コルトレーン): A Love Supreme(至上の愛)(1965)
「聖杯。これはおそらく私の人生で一番聴いたアルバムでしょう。」

Art Blakey(アート・ブレイキー): Free for All(フリー・フォー・オール) (1964)
「これは私のお気に入りのジャズ・メッセンジャーズ・ラインナップ(※おそらくメンバーのこと)であり、皆は本当にトップ・フォームになっています。」

Bob Marley&The Wailers(ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ):Live at the Roxy(1975年録音)
「過去10年間、他の誰よりもボブ・マーリーを聴いてきました。」

Miles Davis(マイルス・デイビス):Nefertiti(ネフェルティティ)(1968)
「トニー・ウィリアムスのタイトルトラック「ネフェルティティ」での演奏は、私のドラムについての考え方を変えました。」

Roy Haynes(ロイ・ヘインズ): Out of the Afternoon(1962年)
「ロイ・ヘインズが過小評価されている可能性はありますか?私はそう思う。」

Squarepusher(スクエアプッシャー):Feed Me Weird Things(フィード・ミー・ウィアード・シングス)

Aphex Twin(エイフェックス・ツイン):Drukqs(ドラックス)

Photek(フォーテック):Form & Function(フォーム&ファンクション)

Plug(プラグ):Drum'n'Bass for Papa(ドラムン・ベース・フォー・パパ)

Ace of Clubs(エース・オブ・クラブス):Benefist

Squarepusher(スクエアプッシャー):Feed Me Weird Things(フィード・ミー・ウィアード・シングス)(1996)
「大学時代に友人から貰ったレコードで、これを聴いた時私は心を完全に吹き飛ばされました。」

Aphex Twin(エイフェックス・ツイン):Drukqs(ドラックス)(2001)
「リチャード・D・ジェイムズの影響は、音楽を作り始めて以来、私のエレクトロニック寄りの音楽ほとんどすべてで聞くことができます。」

Photek(フォーテック):Form & Function(フォーム&ファンクション)(1998)
「Jojo Mayer(ジョジョ・メイヤー※NERVEの奇才ドラマー)が私をPhotekに戻してくれました。これが私のお気に入りのレコードです。」

Plug(プラグ):Drum’n’Bass for Papa(ドラムン・ベース・フォー・パパ)(1996)
「Tim Lefebvre(ティム・ルフェーブル※ジュリアナのバンド[BEAT MUSIC]のベーシスト)にこのジャングルレコードのランドマークを勉強するように薦められたんだ。」

Ace of Clubs(エース・オブ・クラブス):Benefist(2007)
「Plugで知られるLuke Vibert別名プロジェクト。これは私の好きなアシッドです。」
(出典:Irish Times 「Who can keep up with Mark Guiliana?」)


ジャズカルテットのニューアルバム [Jersey]

「このバンドを形成するまで(『Family First』を作るまで)、僕のリーダーとしてのアウトプットの大部分はエレクトロニック寄りだった。たくさんのシンセサイザーや機材を使ったりして、もちろんエレクトロニック・ミュージックから影響を受けたよ。でも僕のゴールは純粋なアコースティック・アンサンブルなんだ。伝統的なジャズの環境、背景のうえで、自分の信念を表現しながら音楽を作り上げる、というのは僕にとって新しいチャレンジだった。サックス、ピアノ、ベース、さらに自分のドラム・キットを必要最小限にして、〈僕のジャズ〉という音を作り込んだんだ。」
(出典:Mikiki 「来日控える新世代ジャズ・ドラマーのマーク・ジュリアナが自身のクァルテットと参加したデヴィッド・ボウイ新作『★』を語る」)

シンセサイザーや機材を使用したエレクトロニックな音楽での即興を聞かせる自身のライフワークバンド[BEAT MUSIC]から一転、オーソドックスなアコースティック編成のジャズカルテットを結成し作品を発表したのが2015年。
アコースティックバンドでの2ndアルバムとなる「Jersey」。メンバーは前作「Family First」と同じくベース:クリス・モリッシー、サックス:ジェイソン・リグビーに加えて、ピアノがシャイ・マエストロからファビアン・アルマザンに変わっています。基本コンセプトであるモダンジャズフォーマットでのアコースティックアンサンブルに変わりはなく、サウンドの中核をなすピアニストが変わったことが前作との大きな違いになります。大らかでメロディックなシャイ・マエストロと、硬派でダーク・美しい響きのファビアン・アルマザン。

なにはともあれ先日公開されたアルバムのオープニングナンバー「Inter Are」の動画をご覧ください。


ドラマーの真上、ハイアングルのカメラのおかげでマーク・ジュリアナの一挙一動が掴めます。
マーク・ジュリアナ凄いです。手元を見るともうスティックを握ってないですね。手のひらと親指・人差し指で転がすというか。素人目でドラムってなんとなく力を込めて叩くイメージがありますけど、ここまで動きが細かくなると、手が力んでては叩けないんですね。


アルバムのハイライトは、ジャズ・メッセンジャーズが好きなんだろうなと思わせるオープニングナンバー「Inter Are」、ハードスウィングな「Big Rig Jones」、オリジナルよりもメロディの良さを活かすアレンジで演奏されるRich Hinman作曲の「BP」などなど。アグレッシブなナンバーにこのバンドの魅力があります。

Jason Rigby – Tenor Saxophone
Fabian Almazan – Piano
Chris Morrissey – Bass
Mark Guiliana – Drums

さらにマーク・ジュリアナの音楽を味わうなら、このアルバム達がオススメ。


マーク・ジュリアナ・ジャズカルテットの1stアルバム。ピアノがシャイ・マエストロな分こちらのほうが聴きやすいかも。おすすめ曲は「One Month」。


マーク・ジュリアナのエレクトロニックミュージックサイド[BEAT MUSIC]バンドの代表作。こちらが気に入ったら「Beat Music: The Los Angeles Improvisations」もおすすめです。


出典:
Irish Times 「Who can keep up with Mark Guiliana?
Mikiki 「来日控える新世代ジャズ・ドラマーのマーク・ジュリアナが自身のクァルテットと参加したデヴィッド・ボウイ新作『★』を語る」



Jersey [ボーナストラック収録/日本語解説つき]

ブラッド・メルドー、デヴィッド・ボウイ、アヴィシャイ・コーエンなどのグループで活躍してきた現代最高峰のドラマー、マーク・ジュリアナ。進化する21世紀のジャズの象徴として話題を呼んだマーク・ジュリアナの『ファミリー・ファースト』に続くのジャズサイドのプロジェクト。

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教則本「マーク・ジュリアナ Exploring Your Creativity on the Drumset」

モダンジャズドラマーの最高峰マーク・ジュリアナによる、ドラムを思いのままに演奏できるようになるために書かれた教則本です。マークジュリアナはその優れた即興演奏能力と並外れたリズムの引き出しの多さで知られ、今日の最も影響力のあるドラマーの一人として数えられています。

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