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UKから登場したオルタナティブジャズ:Puma Blue(プーマ・ブルー)

プーマブルー

雑誌「GRIND」の2017年12月号をパラパラとめくっていたら、UKジャズの新星として「Puma Blue(プーマ・ブルー)」というシンガー/アーティストが紹介されていました。これがまったくの初耳のアーティスト。

現代のジャズは横のつながり(ミュージシャン同士の結びつき)が強く、「誰々のアルバムで1曲歌っていたあのシンガーね」といった感じで、新しいスターであってもまずは顔見せ的な客演が本格的なレコードデビューの前にあるもの。なので1回も名前聞いたことのない完全な初耳は珍しく、それも音楽専門誌ではないファッション誌で見つけたものだから、「あ、見逃してた」となり急いで検索しました。
お察しのとおり「Puma Blue(プーマ・ブルー)」はきわめて検索に弱いアーティスト名なので、検索してもスニーカーの情報しか出てきません。
日本語で読めそうなまともな記事が引っかからなかったので、どんなミュージシャンのアルバムに参加していたかとか、前情報は置いておいてApple Musicで最近リリースされたばかりのEP「Swum Baby」(しかもこの時点でまとまった作品はこの1枚だけ)を聴いてみました。


[“Swum Baby”にも収録されている”Want Me”のPV]

聴いてみた最初の印象は、現代にアップデートされたチェット・ベイカー。そして、そんなに上手くない。雰囲気が凄くあるといった感じで、あ、これはジャズミュージシャンではないなと直感がありました。つまり、何年も先輩ジャズミュージシャンのバンドで修行して、もしくは高度な音楽学校で研鑽を積んだといった演奏/歌唱技術を基本にした音楽性といったものは聴き取れず、どちらかというと技術の前にセンスで勝負するインディーズバンドの雰囲気を纏っているように聴こえました。そして、この直感が正しいなら「プーマ・ブルー」の登場は事件だと思いました。なぜなら「オルタナロック」や「インディーズパンク」、「エレクトロニカ」などなど、数あるユースミュージックの表現方法の中から何十年かぶりに「ジャズ」を選択するポップスターが登場したということになるからです。彼の作品内容以前にユースミュージックとしてのジャズが復活しているというのが驚きでした。


[(She’s) Just A Phase]


最近のUKジャズシーン

UKジャズと言えばざっくりいって、ジャイルス・ピーターソンに代表されるダンス・ミュージックとしてのジャズ(アシッド・ジャズ~クラブジャズ-ブロークンビーツ)系と、現在のアメリカのジャズシーン(リバイブジャズ)とつながる系、アメリカのミュージシャンと交流があるけれどもう少しコンサバディブなジャズ系、といった感じに分けると把握しやすいと思います。

2017年半ばが、本格的なジャズ人気復活の夏になるなどと、誰が予想しただろうか? 現在ロンドン南部では、ビンカー&モーゼスやユセフ・カマール、ユナイテッド・ヴァイブレーションズ、エズラ・コレクティヴ(Ezra Collective)などのジャズマンやジャズウーマンが人気を博し、大きなジャズ・シーンを作り出している。

(出典:ロンドン・アンダーグラウンド・ジャズ・シーンの新星、プーマ・ブルー)

ここで最近注目を集めているロンドンジャズシーンと紹介されているは、

Yussef Kamaal(ユセフ・カマール)

[2016年にジャイルス・ピーターソンのレーベルからデビューした、DJ/プロデューサーのKamaal WilliamsとドラマーYussef Dayesのユニット。70年代のスピリチュアルジャズやジャズファンクとブロークンビーツが融合したような音楽性。]

United Vibrations(ユナイテッド・ヴァイブレーションズ)

[トロンボーン、サックス、ベース、ドラムの4人からなるアフロスピリチュアル・ジャズファンクバンド。目下の最新作をリリースしたレーベルはUbiquity。]

Ezra Collective(エズラ・コレクティヴ)

[トランペット、サックスをフロントに据えた王道ジャズクインテット編成ながらアフロビート、ヒップホップ、レゲエをクロスオーバーするまさにロンドンな音楽性]

Binker & Moses(ビンカー&モーゼス)

[ザラ・マクファーレンのサポートを務めるサックスのビンカー・ゴールディングと、ドラマーのモーゼズ・ボイドによるデュオユニット。硬派なフリージャズスタイル。]

上記の4組は、本当にざっくりまとめるとジャイルス・ピーターソン系です。前情報なしでも、音楽の内容自体からある程度その系統を推測できる音楽性のバンドたちで、引用したi-Dの記事でも「(ロンドンに)本格的なジャズ・シーンが開花するなか、プーマ・ブルーは”ジャズ”という意味合いにおいて異端の存在」と言及されています。確かにプーマ・ブルーはこのグループには入らない。


プーマ・ブルーとは何者か?

プーマ・ブルーはロマンチックな詩人で、豊かな声の音色がジェフ・バックリー、チェット・ベイカー、そしてビリー・ホリデーと比較されています。彼の官能的な、雰囲気のある楽曲は、ジャズとファンクの絶妙なニュアンスが取り入れられていますが、ステージの上ではむしろパンキッシュな姿勢を覗かせます。彼はタイトでクラックなバンド、魅力的なボーカル、そしてたくさんのグルーヴで私たちを魅了します!

(出典:モントリオール国際ジャズフェスティバル公式サイト:出演アーティスト紹介「プーマ・ブルー」)

プーマ・ブルーは、Cosmo Pyke(コスモ・パイク)やEastern Barbersといったゆるいレイドバックしたローファイ感とシューゲイズの要素を併せ持つロンドンの新興音楽シーンの一員です。また、ジャズは彼のデビューEP全体に流れるムードを形作っています。プーマ・ブルーは今や、そのシーンをリードする存在です。

(出典:metro.co.uk「Artist of the day 22/06: Puma Blue」)

Cosmo Pyke(コスモ・パイク)


[Chronic Sunshine]

Eastern Barbers


[I CANT SEE U]

プーマ・ブルーを構成しているのはローファイとシューゲイズ、そしてジャズ。

ほかに好きなアーティストは?
プーマ・ブルー「どんなアーティストであれ、僕はそのひとの音楽が気に入ったら、そこからできるだけ多くを吸収したい。今は、バッドバッドノットグッドと、ショー・ミー・ザ・ボディのミックステープを繰り返し聴いてる。でも、ずっと僕にとって大きな意味をもってきたアーティストは、ジェフ・バックリィ、J・ディラ、そしてディアンジェロ。ヒップホップ全般、エリオット・スミス、レディオヘッド、ビル・エヴァンス、ウェス・モンゴメリー、DJハリソン(ブッチャー・ブラウン※詳しくはこの記事で)、ジョン・フルシアンテ、ダニー・ハサウェイといった音楽にも大きな影響を受けた。

(出典:ロンドン・アンダーグラウンド・ジャズ・シーンの新星、プーマ・ブルー)

BADBADNOTGOOD


[BADBADNOTGOOD & Ghostface Killah – Ray Gun ft. DOOM]

Show Me The Body


[Trash]

i-Dの記事で自身の属するサウスイーストロンドンシーンの話をしているのですが、プーマ・ブルーの口から名前の挙がるアーティストたちを見ていると、やっぱりジャイルス・ピーターソンのロンドンジャズシーンとはリンクしてなさそうです。いまのところ他のジャズミュージシャンとのつながりも見えてきません。

サウスイーストロンドンシーンのアーティストたち
Jerkcurb(ジャークカーブ)

Lucy Lu(ルーシー・ルー)

Maxwell Owin(マックスウェル・オーウィン)

ユースによるローファイでシューゲイズでチルウェイブ以降のベッドルームジャズ。いまのところオーセンティックジャズとは別の流れになりますが、これは、このシーンは応援したいです。



Underground Jazz Scene from South East London 2017

シーンを一望できる好ミックス。ほんとクール。
01:Maxwell Owin / Darlin’
02:Puma Blue / (She’s) Just a Phase
03:Jesse James Solomon / They Don’t Love You
04:Jerkcurb / Walking in The Air
05:Lava feat Eric Lau/ Run 2 instru
06:Maxwell Owin / Blue In Green
07:MC Pinty / E’s
08:Oscar Jerome / 2 Sides (STW Premiere)
09:Jerkcurb / S.F.M
10:Maxwell Owin / Presure Makes Dimonds
11:Jesse James Solomon / The Ride Home
12:MC Pinty / Pint’s Lullaby-Fresher
13:Lava / Black Magic
14:Jerkcurb / Voodoo Saloon
15:Puma Blue / Want Me

Puma Blue – Swum Baby

プーマ・ブルーがセレクトしたJAZZプレイリスト


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