UKジャズシーン:Jazz re:freshed(ジャズ リ:フレッシュド)

おそらく日本のほとんどの人が持つ「Jazz re:freshed(ジャズ リ:フレッシュド)」のイメージは、ブロークンビーツ寄りのクラブミュージックと親和性の高いNuJazzレーベルといったイメージではないでしょうか。4HeroのディーゴやBugz In The Atticのカイディ・テイタム、マーク・ド・クライブ・ロウ、テイラー・マクファーリン、ロバート・ミッチェルといった豪華メンバーが参加した2008年のコンピ盤「Jazz re:freshed vol.1」や、

5ポンドで購入できる名物シリーズ「5ive」で名前を覚えた人が多いと思います。

[5iveシリーズの口火を切ったのはロバート・グラスパーやマーク・ジュリアナと並ぶ新世代ジャズシーンのスター、リチャード・スペイヴン。今聴いても新鮮。]


[The Sure Co. リチャード・スペイヴンと、フィン・シルバーの仕事で知られるグラント・ウィンザーとの共同プロジェクト。これも名作。]

ただ日本盤まで発売されたトマッソ・カッペラット&アストラル・トラヴェル『コズメシック』のリリース以降、レーベルとしてのリリースが空いてしまいその活動が日本には伝わりづらくなっていました。おそらく資金調達に成功して運営が安定した2015年以降にまた音源のリリースが活発になるのですが(特に5iveシリーズは若手UKミュージシャンのショーケースとして上手く機能している)、話題になってるのをみたことがありません。実際、検索してみると一部のアンテナの高い人が個人的に音盤を輸入している感じがわかります。

というわけで、改めて「Jazz re:freshed」について調べてみました。ただし5年以上前のことをウェブで調べるのには限界があるので、おそらく露出が増えるであろう今年、メディアの取材やインタビューに期待です。


ジャズ リ:フレッシュド略史


[カイディ・テイタム・バンドの2008年のライブ。サックスは当時まだ20代前半のシャバカ・ハッチングス。]

2003年5月、「Jazz re:freshed」の誕生はJustin Mckenzie(ジャスティン・マッケンジー)とAdam Moses(アダム・モーゼス)の2人の控えめなビジョンから始まりました。それはジャズ界のエリート主義と偏見への挑戦で、オルタナティブ・ヒップホップやエレクトロニック・ソウル、ブロークンビーツ、ラテンにアフロジャズのインスピレーションを受けたジャズの週刊ライブ・ショーケースとして始まりました。


[毎週行なわれているJazz re:freshedのライブ]

現在もロンドンのMau Mau Barで毎週木曜日に行なわれる「Jazz re:freshed Residency」は、ロンドンの主流のジャズシーンに魅力を感じない若いUKジャズミュージシャンにメインストリームとは違うパフォーマンスの場と機会を提供することになります。

2008年にはレーベルとして初めてリリースを行い(冒頭の「jazz re​:​freshed Vol1」)、数は少ないながらも近年はUKの若手ジャズミュージシャンのショーケースとしてその存在感を増しています。

また、2006年にYoutubeチャンネルを開設。10年以上に渡る”Jazz re:freshed”のジャズライブがアーカイブされたそのチャンネルには、20代前半のシャバカ・ハッチングスの演奏が見つかります。他にもシーンのミュージシャンの姿を確認でき、現在へと繋がる軌跡を辿れる貴重なソースになっています。


アダム・モーゼス(Jazz re:freshed)「2002年中頃まで私たちはUprock Recordingsというヒップホップレーベルをやっていました。その頃は定期的にイベントを開催していて、ヒップホップ、ソウル、ファンク、ブロークンビーツをDJでプレイしていました。楽しい時間を過ごしましたが、パーティーのプレッシャーから少し離れたくなっていきました。

私たちは何年もの間、幅広くジャンルレスなコレクションを蓄積している熱狂的なビニールコレクターで、なかでもジャズは非常に重要な要素でした。ジャズコレクションは健康的に成長していきましたが、DJでプレイすることはほとんどありませんでした。

“jazz re:freshed”は私たちの音楽をプレイするのに適切な場所として生まれました。
数週間後、プレイしていたベニューの隅にステージがあることに気づきます。

当時、西ロンドンは音楽の最先端でブロークンビーツ、ジャズ、nu-jazzやnu-soulのレコードはすべて西ロンドンのスタジオで作られていました。私たちはそのシーンのほとんどと顔見知りでした。

2003年の夏頃からJazz re:freshedの活動が明確になっていきます。才能溢れる友人にコンタクトしていき、そのラインナップにはカイディ・テイタム、マーク・ド・クライブ・ロウ、ベンベ・セグエなどが含まれていました。ロンドンの夜を体現する恒例のイベントに収束していきます。

15年前、ロンドンのジャズシーンは閉鎖的で、ロンドンのストリートにあった多文化的風景はジャズの現場では決して見られなかった。

このことは私たちにとって重要でした。なぜならjazz re:freshedは皆のためにあり、ジャズも皆のためのものです。

私たちは新しい観客と人々を求めて積極的にシーンの外に出ました。
ヒップホップ、R&B、レゲエのクラブでフライヤーを配って人を集め、それによって文化とサウンドが溶け合い混ざり合っていきました。」


UKジャズミュージシャンから見たその存在感

Nubya Garcia(ヌビア・ガルシア)


「Jazz re:freshedはバンド活動で稼くことの出来る場を提供します。”おい、ここにチャンスが転がっているよ”といったたわ言ではなく実際に。彼らのそのスタンスは非常に重要です。そして、ファミリーのようなコミュニティの雰囲気があります。」


Moses Boyd(モーゼス・ボイド)


「私たちには必ずしも固定客がいるわけではありません。ジャズが好きな黒人コミュニティーは全くいないとは言いませんが、UKではおそらくアメリカほど多くはありません。Jazz Re:Freshedは、私たちの音楽をオーディエンスに再接続する素晴らしい仕事をしてくれました。」


Shabaka Hutchings(シャバカ・ハッチングス)


「Jazz re:freshedの画期的な点は、演奏者と聴衆の両方でマイノリティーの存在感を上げようとトライしているところです。あなたがJazz re:freshedに行くと、あなたは多くの黒人を見かけるでしょう。それはジャズのライブであなたが見かける黒人の一年分の人数より多いはすです。」


UKジャズの歴史は、ニューオーリンズの音楽が大西洋を渡った20世紀初頭に始まります。それ以来、アメリカの影響力は衰えていませんが、UKで独自に進化した部分もありました。そのほとんどは前衛ミュージシャンの功績ですが、一部は植民地に出自を持つミュージシャンからもたらされました。

また別で記事にしますが、UKマイノリティーにジャズ教育の機会を与えた「Tomorrow’s Warriors」と、スキル習得後の音楽活動の場を作った「Jazz re:freshed」。シーンの活況をこういった組織が支えたのが伝わってきます。


「Jazz re:freshed」は2015年4月から英国芸術協会より芸術資金調達システムを利用して95,000ポンド(2018年1月時点で約1,446万)の資金調達を行なっており(助成金ですね)、運営は完全に自立しているそうです。



「Jazz re:freshed」はモーゼス・ボイドとシャバカ・ハッチングスのバンドのSXSWやAFROPUNK FEST Brooklynなど英国外の大規模フェスへのステージ出演のサポートもしています。その成果はしっかりと表れており、シャバカ・ハッチングスの次の言葉から確認できます。「(いま)バンドは国外(英国外)の主流メディアを通って評価され、伝統あるジャズのライブハウスでプレイし始めています。」

アダム・モーゼス(Jazz re:freshed)「私たちは過去14年間、週に1度のレジデントを行ってきたので、ある程度の浮き沈みは見てきました。しかし、今間違いなくこれまで以上に多くの若いオーディエンスを獲得しています。」


[NY公演を成功させたヌビア・ガルシア]


出典:
NEW YORK TIMES 「Ambassadors of London’s Rebooted, Revitalized Jazz Scene Come to New York」

DOWNBEAT 「Jazz Re:Freshed Provides Outlet for U.K. Innovators」

i-D 「jazz, but not as you know it」

BOILER ROOM「Residents’ Hour: Adam Rockers (jazz re:freshed)」

Jazz re:freshed 公式サイト


We Out Here(2枚組アナログレコード)

Shabaka Hutchings、Moses Boyd 、Joe Armon-Jones擁するEzra Collectiveと燃え盛る若きロンドンのジャズマン達が大集結。UKジャズの新たなる記念碑がここに。

Gilles Peterson主宰の名門より、ストリートを中心に若きジャズマンたちによって生々しい活気に満ち溢れた新たなシーンを形成しつつあるロンドン・ジャズの“現在”をリポートするプロジェクト『We OutHere』がリリース。本プロジェクトは自らのバンドthe AncestorsやSonsof Kemetを率いて、ブラック~アフロからアヴァンまで現在のUKジャズ・シーンを牽引するShabaka Hutchingsが音楽ディレクターを務め、全曲本作のために録り下ろされた新曲を収録。収録アーティストはそのShabaka Hutchingsをはじめ、若手屈指の才能として大きな注目を集める天才ドラマーMoses Boyd、そして今最もアルバムが待たれている件伴奏者JoeArmon-Jones、そのJoeもメンバーとして名を連ねている南ロンドン・ストリートを席巻するEzra Collectiveなど今最も注目すべきアクトが集結。アシッド・ジャズやブロークン・ビーツの遺伝子を引き継ぎながら、エレクトロニカからダブまで様々な音楽要素を折衷してきたUKジャズの歴史を60年代のハード・バップの如き熱量で再生した現代ジャズの真骨頂にして、記念碑となるべき作品がここに誕生した。


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