UKジャズシーン:Tomorrow’s Warriors コミュニティが発展させるジャズシーン

ロンドンシーンで最も活気のあるジャズ教育機関として、UK新世代ジャズシーンが紹介される度にちょくちょく目にするのが「Tomorrow’s Warriors(トゥモロウズ・ウォリアーズ)」の名前。UKジャズがイケてるとお墨付きを与えたi-Dの記事にも、BandcampのUKジャズガイドの記事にも、あの英ガーディアン紙の記事にもその名前は記載されています。

なぜこんなにトゥモロウズ・ウォリアーズの名前が出てくるのでしょうか??


その理由は、現シーンで活躍するジャズミュージシャンが、たとえばモーゼス・ボイドやヌビア・ガルシア、テオン・クロスにエズラ・コレクティブ、シャバカ・ハッチングスまで、皆トゥモロウズ・ウォリアーズ出身のミュージシャンなのです。


Tomorrow’s Warriors(トゥモロウズ・ウォリアーズ)とは?!

トゥモロウズ・ウォリアーズは、ジャズ・ウォリアーズのオリジナルメンバーでベーシストのGary Crosby(ゲイリー・クロスビー)によって1991年に設立されたアーティスト開発プログラムです。

その活動理念はジャズの音楽教育を通じて芸術活動全体に多様性を増加させること。アフリカ系コミュニティと女性に音楽教育の機会を増やすことに特に力を入れています。この理念の背景にはゲイリー・クロスビーのジャズ・ウォリアーズでの活動の経験があります。


コートニー・パインが中心なって設立された「Abibi Jazz Arts」から生まれ、1985年に活動を開始したこのバンドは、それまでファンクやレゲエに限られていたUKのアフリカ系ミュージシャンに、それ以外の場で才能を発揮するチャンスを提供しました。初期のメンバーに名を連ねるはコートニー・パイン、クリーブランド・ワトキス、スティーヴ・ウィリアムソン、そしてゲイリー・クロスビー。このバンドは国際的な評価を得ます。

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トゥモロウズ・ウォリアーズはジャズ・ウォリアーズの成功を自分達のコミュニティに還元しようと生まれたプロジェクトでした。

「トゥモロウズ・ウォリアーズ・プロジェクトは、アフリカ系ミュージシャンの恵まれない環境が、より恵まれた環境の英国の白人ミュージシャンと同じレベルでプレイするスキルの発達を妨げている、この状況に対処することを示唆している」
(出典:Black British Jazz「STANDARD, ADVANTAGE, AND RACE IN DISCOURSE ABOUT JAZZ」)
このUKにおけるアフリカン・ディアスポラの状況は、もう少し深く追いたいところですが私では勉強不足で…ただUKジャズミュージシャンがやたらとグライムシーンへの共感をインタビューで口にするのは、この辺りの事情が関係しているのかなと思います。

2017年にトゥモロウズ・ウォリアーズはその活動を評価されイギリスジャズ議会賞を教育部門にて受賞しています。

実際にどういった活動をしているんでしょうか?


毎週行なわれる無料のプログラム

まず「開発セッション」と呼ばれる毎週土曜日に行なわれる11歳から18歳の若年層を対象にしたプログラムがあります。
午前中は15歳以下の向けの「ジュニア・ウォリアーズ」クラス。スケール、コード、アルペジオ、即興の基本的なジャズテクニックを学ぶことに焦点が当てられたプログラムです。
午後は18歳以下「デベロップメント」クラス。先進的な即興コンセプトを学び、難しいジャズスタンダードに取り組んでいきます。どちらのクラスも完全に無料。

こういったセッションに参加し、順調にスキルを磨いていったミュージシャンは、トゥモロウズ・ウォリアーズが運営するバンドへスカウトされ大きな舞台で演奏する機会が与えられます。


2018年2月に開催されるジョン・コルトレーン・トリビュートフェスティバル「Coltrane Culture」。ライブ出演者にはトゥモロウズ・ウォリアーズの名前が。というか主催がトゥモロウズ・ウォリアーズ関係なので、教育の機会もショウの機会もどんどん作っていくって感じですね。

トゥモロウズ・ウォリアーズ出身のバンドも積極的にサポートしているようです。


[ヌビア・ガルシアやシーラ・モーリス-グレイが参加するオール女性メンバーで構成されたNÉRIJA。名門ジャズクラブ”ロニー・スコット”へもTWのサポートで出演を果しています。]


[最近、ジャイルス・ピーターソンのWorldwide AwardsでBest Jazz Album of the Yearに選ばれ、大きく話題を呼んでいるエズラ・コレクティブもトゥモロウズ・ウォリアーズのYouth出身です。]


TWはカリキュラムが優れているというよりは、コミュニティとして場が上手く機能している感じが伝わってきます。

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「このシーンはすべて、ゲイリー・クロスビーの仕事の成果です」とヌビア・ガルシアはTHE FALLのインタビューで答えています。「彼は膨大な数のミュージシャンを輩出した。私たちも若い世代をサポートし続けていく必要がある。」


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モーゼス・ボイド「今バンドで一緒に演奏しているテオン・クロスは子供の頃から知っている。ヌビア・ガルシアも。南ロンドンには本当に良いシーンが沸き起こっています。他の場所と比較するのは難しい。」

“1つのことは確かです。若いプレイヤーをトレーニングする機会がなければ、ロンドンなんかで将来のジャズムーブメントはありません。”
(出典:THE FALL)


出典:
Jason Toynbee,‎ Catherine TackleyBlack British Jazz)
THE FALL「London Jazz, The Capital’s Latest Scene」
Tomorrow’s Warriors 公式サイト


We Out Here(2枚組アナログレコード)

Shabaka Hutchings、Moses Boyd 、Joe Armon-Jones擁するEzra Collectiveと燃え盛る若きロンドンのジャズマン達が大集結。UKジャズの新たなる記念碑がここに。

Gilles Peterson主宰の名門より、ストリートを中心に若きジャズマンたちによって生々しい活気に満ち溢れた新たなシーンを形成しつつあるロンドン・ジャズの“現在”をリポートするプロジェクト『We OutHere』がリリース。本プロジェクトは自らのバンドthe AncestorsやSonsof Kemetを率いて、ブラック~アフロからアヴァンまで現在のUKジャズ・シーンを牽引するShabaka Hutchingsが音楽ディレクターを務め、全曲本作のために録り下ろされた新曲を収録。収録アーティストはそのShabaka Hutchingsをはじめ、若手屈指の才能として大きな注目を集める天才ドラマーMoses Boyd、そして今最もアルバムが待たれている件伴奏者JoeArmon-Jones、そのJoeもメンバーとして名を連ねている南ロンドン・ストリートを席巻するEzra Collectiveなど今最も注目すべきアクトが集結。アシッド・ジャズやブロークン・ビーツの遺伝子を引き継ぎながら、エレクトロニカからダブまで様々な音楽要素を折衷してきたUKジャズの歴史を60年代のハード・バップの如き熱量で再生した現代ジャズの真骨頂にして、記念碑となるべき作品がここに誕生した。


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