プーマブルー「サウスイーストロンドンのライブミュージックシーンには、特にこの3年間は、ミュージシャンとしてもリスナーとしても深く影響を受けた。」
(出典:fredperry.com)
[Puma Blue]
なぜ今、ロンドン南部の音楽シーンが活気に満ちているのでしょうか?
プーマブルー「今、ロンドン南東部には、音楽に身を捧げて、とんでもなく素晴らしい作品を作り出しているひとがたくさんいる。みんなが音楽への愛に突き動かされるようにお互いのバンドでプレイし、お互いを押し上げている感じ。僕と同じジェイコブという名のミュージシャンが、ジャークカーブ(Jerkcurb)というドランクン・サーフ系の音楽プロジェクトを進めていて、それがとても面白い。それと、ルーシー・ルー(Lucy Lu)の名で活動するルーク(Luke)ともたくさんの音楽コラボレーションをしているよ。あ、それと、僕の仲間、マックスウェル・オーウィン(Maxwell Owin)もね。あいつは音の魔術師だよ。」
(出典:i-d.vice.com)
今までに観た最高のギグは何?
プーマブルー「数年前のBrainchildフェスティバルで観たSEダブコレクティブ」
[SE Dub Collective:ジョー・アーモン・ジョーンズやマックスウェル・オーウィン、ヌビア・ガルシアといったUK新世代ジャズのミュージシャンが数多く参加するダブバンド。]
プーマ・ブルーは、Cosmo Pyke(コスモ・パイク)やEastern Barbersといったゆるいレイドバックしたローファイ感とシューゲイズの要素を併せ持つロンドンの新興音楽シーンの一員です。また、ジャズは彼のデビューEP全体に流れるムードを形作っています。プーマ・ブルーは今や、そのシーンをリードする存在です。
(出典:metro.co.uk)
今聴いている新しいバンドは?
コスモ・パイク「ジャークカーブ(Jerkcurb)だね。彼はキング・クルールの影響を受けているね。僕たちみんなと同じ地域出身だし間違いなくキング・クルールの影響だよ。彼はホーセイ(Horsey)と呼ばれるバンドとともに出てきたんだけど、今ではロンドンの南部では最高のバンドだね。「Arms and Legs」というビデオを全部スナップチャットで撮ったよ。Sub Luna Cityはキング・クルールやみんな僕の友人のラップグループなんだ。彼らは2017年に新曲を出しているよ。」
(出典:fredperry.jp)
[Horsey – Arms & Legs (Official Video)]
[Sub Luna City – Boiler Room London Live Show]
いま1番おもしろい音楽シーンはどこか?と聞かれたら迷わずサウスイーストロンドン!!と答えて間違いないでしょう。
King KruleやPuma Blueを中心に、ローファイで、パンクとヒップホップとジャズがシャッフルする新しい音楽シーンが形成されています。
このシーンはライブとインターネットでスピーディーに進行しているため、日本になかなか伝わりづらく、レーベルから正規リリースされる作品だけをチェックしていても追いかけるのが難しいところがあります。
ただようやくサウスイーストロンドンの隆盛には、King KruleとJerkcurb、ブリットスクールとSub Luna City周辺の繋がりが背景にありそうだと目星がついてきました。
Puma Blue、そしてKing Kruleから広がる南ロンドンのパースペクティブ、メモ的に少しずつまとめていきたいと思います。
※プレイリスト作りました♪
Contents
King Krule
King Kruleは南ロンドン・ペッカム出身のArchy Marshall(アーチー・マーシャル)のプロジェクト。
17歳のときにリリースしたセルフタイトルのEPがピッチフォークで8.0と好評価され、19歳の誕生日にリリースされたデビューアルバム「6 Feet Beneath the Moon」で、地下ロンドンの新たな顔役として王冠を戴いたKing krule。
ロカビリー、チェット・ベイカー、マイク・スキナー、ポストパンク、ダークウェイブ、初期ダブステップといった音楽を吸収したアーチーの身体は、その様々な音楽ソースをシャッフルしメランコリックなサウンドへとビルドします。そして、それ以上に耳を奪われるのは、アーチーの特徴的なバリトン・ヴォイス。
米FADER誌の表紙を飾り、Frank Ocean(フランク・オーシャン)やKanye West(カニエ・ウエスト)からオファーを受け、オッドフューチャーのEarl Sweatshirtのプロデュースを行い、Beyoncé(ビヨンセ)も虜にした若き天才アーティストです。
[300万再生された”A Lizard State”のMV]
King Kruleことアーチー・マーシャルは2008年から2011年にかけてブリットスクールに通います。
ブリットスクールは、アデルやエイミー・ワインハウスなど数多くの才能を輩出した南ロンドンにあるパフォーミングアートスクール。
14〜19歳までのこどもたちが通う、英国で唯一の無償学校だそうです。
アーチー・マーシャルは在学中の2010年、15歳のときからZoo Kid名義でBandcampに曲をアップし始めます。同じくブリットスクールに通っていたJamie Isaacを相棒に、DTMソフトの無料デモ版でトラックを製作。デモ版の有効期限が24時間しかなく、終了すると製作中のデータがすべて消えるため、どの曲も一晩で仕上げていたそうです。
[Zoo Kid時代のライブ]
ギターの演奏は、兄のJack Marshall(ジャック・マーシャル)と 「Words Backwards」というバンドを組んでいたJerkcurbことJacob Readの影響を受けます。
[jerkcurb]
歌の影響はチェット・ベイカー、イアン・デューリー、ジョー・ストラマーから。
[兄Jack MarshallとJerkcurbが組んでいたバンド”WORDS BACKWARDS”]
また、兄のジャック・マーシャルとJerkcurbとは3人で「DIK OOZ」というユニットも結成していました。
アーチーがZoo kidとしてBandcampにアップした楽曲のうち、「Out Getting Ribs」と「Has This Hit」がインディーレーベル・House Anxietyの目に留まり、7’シングルをリリース、これがデビューになります。
[Out Getting Ribs]
2017年10月にリリースした4年ぶりの2ndアルバム「The OOZ」はピッチフォークで9.0の評価を受け、2017年を代表する作品になりました。
Jamie Issac
海外から眺めてみたならば、英国の音楽とはアデルのバラードであり、エド・シーランとジェイムス・ベイのコンテンポラリーなフォークソングであり、そして、カルヴィン・ハリスの居心地の良いシンセサウンドかもしれません。
しかし、私たちみんなが知っているように、決してそうではない。英国のサウンドは、Radio 1のインタビューや、ブリット・アワードの年間リストとは別に存在する世界でした。
それは、クラブやストリート、オンラインで成長し、支持されるサウンドです。
おそらく、今そのサウンドの頂点にあるのは南ロンドンで、そして、南ロンドンのど真ん中にいるのはジェイミー・アイザックです。
(出典:noisey.vice.com)
南ロンドン・クロイドン出身のJamie Issac(ジェイミー・アイザック)。
ピアノを演奏し、ビル・エヴァンス、デイヴ・ブルーベック、テディ・ウィルソンといったオーセンティックなジャズピアニストに影響を受けたと語っています。フェイバリットに挙げるシンガーはチェット・ベイカー。
ジェイミー・アイザック「ジャズの大ファンなんだ。特に50年代後半のウエストコーストジャズ。デイブ・ブルーベック、チェット・ベイカー、ポール・デスモンドはぼくの人生を変えたよ。」
(出典:「MUSIC CROWNS」)
ブリットスクール在学中に出会ったアーチー・マーシャルと一緒に多くのプロジェクトに取り組み、2016年にHouse Anxiety経由でMarathon Artistsからデビューアルバム「Couch Baby」をリリースします。
Dummyのインタビューで、このアルバムの製作にインスピレーションを与えたモノを答えています。
「マーヴィン・ゲイのリハーサル映像」
ジェイミー・アイザック「このマーヴィン・ゲイのリハーサル映像は、アルバムを製作していたとき本当に影響を受けた。この映像でマーヴィン・ゲイは『I Want You』をシンプルな4ピースバンドに落とし込んでいて、彼のリラックスしたポジションとシンプルなパフォーマンスは、僕が作りたかったものをちょうど要約していた:最小限の要素とシンプルな歌詞で、チルできるロマンチックなアルバム。」「Bill Evans “Peace Piece”」
ジェイミー・アイザック「夜、寝るのが難しいときに、この曲を何度も何度も繰り返し聴いている。ビル・エヴァンスにはピアノの音色で影響を受けているので、彼に言及せずにこのアルバムについて話すことはできないと思っている。」
(出典:「DUMMY」)
[2ndアルバム「(4:30) Idler」がまもなくリリースされます]
「(4:30) Idler」について
ジェイミー・アイザック「アルバムの4分の1をLAで作曲した。できるだけロンドンとは正反対の場所に行きたいと思って。LAはいつも晴れているからね。’Slurp’なんかは間違いなくカリフォルニアのバイブがあるよ。LAで書いたものの多くは、家に持って帰って仕上げた。」
まだロンドンに住んでる?
ジェイミー・アイザック「そうだよ、ペッカムに住んでる。もう4年ぐらいになる。元々はクロイドン出身だったけど、サウスイーストロンドンに住むことにした。良いところだよ。」
(出典:「Music Crowns」)
Pitchforkにはスルーされてますが、高い評価を受けたデビューアルバム「Couch Baby」。
この「Couch Baby」のリリースに先行すること約3ヶ月前、1つのミックステープがドロップされています。
ミックステープの名前は「Loose Grip」。
内容は「Couch Baby」と「Blue Break EP」のリミックス・リワークコレクション。
それぞれの楽曲を手がけたのはKing Krule(アーチー・マーシャル)の別名義Edgar The Beatmaker、Rago Foot、Jadasea、Black Mackといった”Sub Luna City”クルーに加えて、Rejjie Snow、Jesse James Solomon、MC PINTYといった南ロンドンのMCたち。
ジェイミー・アイザック「アーチーと同じ家に一緒に住んでいる(2017年2月時点)。彼は兄弟みたいな感じ。僕たちは一緒に作業したり、協力したりするけど、自分たちの音楽は一緒にしていない。僕たちは日中に音楽を作っているから、顔を会わせるのは夕方から。僕のミックステープにフィーチャーしているラッパーの多くもこの地域の出身だよ。」
(出典:「wonderlandmagazine.com」)
Sub Luna City
(出典:sublunacity.bandcamp.com)
Sub Luna CityはEdgar The Beatmaker(アーチー・マーシャル)、Rago Foot、Jadasea、Black Mackの4人をコアメンバーとなって結成されたヒップホップグループ。
2014年1月に1stアルバム「City Rivims Mk 1」をリリースしています。
50年代のロカビリーのイメージを纏うKing Krule名義と違い(King Kruleの由来はエルビス・プレスリー主演の映画「King Creole」をもじったもの)、ここでのアーチーは日々サウンドクラウドへビートをアップするビートメイカーといった趣き。
アーチーはEdgar以外にもDJ JD-Sports名義でサウンドクラウドへトラックをアップしています。
DJ JD-Sportsってなに?
アーチー・マーシャル「DJ JD-Sportsはサイドプロジェクト。スポーツ好きのJ・ディラって意味だよ。J・ディラの大ファンなんだ。」
ロンドンではライブをしなくなっているらしいKing Kruleですが、Sub Luna CityのEdgar The Beatmakerとしてはライブを行なっています。
Rago Foot
(出典:ragofoot.bandcamp.com)
ミックスとマスタリングをマックスウェル・オーウィンが手がけ、アーチーをはじめとしたSub Luna Cityクルーが参加したRago Footの1stアルバム。
Rejjie Snow
ダブリン生まれのレジー・スノウが、ラッパーになりたいと夢を語ると人は決まって彼にこう返したそうです。「アイルランド人なのに??」
2013年に南ロンドンにやってきたレジー・スノウ。アーチー・マーシェルやロイル・カーナー、ジェシー・ジェームスと交流を深めます。
デビューEP「Rejovich」にはロイル・カーナーとジェシー・ジェームスが参加。このEPはiTuneのヒップホップチャートに食い込みます。
300 Entertainmentと契約しリリースしたデビューアルバム「Dear Annie」
Jesse James Solomon
レジー・スノウ、ロイル・カーナーとともに、有望な若手ラッパートリオとしてプッシュされていたジェシー・ジェームス・ソロモン。
Sub Luna CityのBlack Mackもトラックを提供するジェシーのデビューEP
一度自分を見つめなおしたかったという理由から活動が沈滞していましたが、いくつかのシングルや客演がリリースされたあと、先日ついにEPを発表。
2018年リリースの最新EP「Strata」
Loyle Carner
ロイル・カーナーもブリットスクール出身。アーチーはブリットスクールの先輩にあたり、レジー・スノウと知り合ったのもアーチーを介して。レジー・スノウのデビューEP 「Rejovich」収録の”1992″にフィーチャリングされ、それがMCとしてのキャリアの始まりだとインタビューで答えています。
「僕がアーチーの家に遊びに行ったらレジー・スノウが居て、そのときに初めて喋ったんだ。彼がダブリンに戻ったとき、MF Doomのライブの前座の依頼が来た。彼はまだライブの経験が少なかったのでサポートを必要としていた。それで僕をフックアップしたんだ。」
(出典:nme.com)
MC Pinty
DJ JD SPORTS(アーチー・マーシャル)やウィザード・マックスウェル・オーウィンがプロデュースするPintyの1st。
Maxwell Owin
マックスウェル・オーウィンは南ロンドンのMCの作品をプロデュースする一方で、IdiomやSE Dub Collectiveといったライブバンドのエレクトロニックサウンドを担うなど多方面で活躍するベーシスト。プーマブルーから「音の魔術師」と称賛されています。南ロンドンのアーティストとジャズミュージシャンをパイプする重要人物。
今のところ唯一のリリースである「Fruits And Flowers EP」では、ジョー・アーモン・ジョーンズやジェイク・ロングの音を素材に、まるでジャズ meets ブリアルなトラックを組み立てています。
ジョー・アーモン・ジョーンズと結成したジャズバンド「Idiom」
[Idiomのライブ動画。35分過ぎからは必見です。魔術師の本領発揮。]
サウスイーストロンドンのミュージシャンで構成されたダブ、ロックステディバンド「SE Dub Collective」
マックスウェル・オーウィンをはじめとして、ヌビア・ガルシア、ジェイク・ロング、ジョー・アーモン・ジョーンズ、フェミ・コレオソ、ジェームス・モリソン等新世代UKジャズミュージシャンから、Poppy Ajudhaといったシンガーも参加しています。
ジェイミー・アイザックのライブバンド
ジェイミーのバックで演奏しているのは、マックスウェル・オーウィン、Idiom/Maishaで活躍するドラマーのジェイク・ロング。
Joe Armon-Jones
ジョー・アーモン・ジョーンズによるSolid Steelで公開されたUKジャズとSub Luna City、ペッカム周辺の未発表音源を使いまくったミックス。9割ぐらいunreleased。そして、UKのこのシーンではジャズミュージシャンとアーティストがどのくらいの距離感にいるのかというのがすごくよく伝わるミックスです。
キング・クルール「シーンは大きくなって、ジャズのシーンも大きくなった。誰もが音楽を作っている。ペッカムは本当にクソ優雅になった。」
(出典:spin.com)
最近はKing Krule(アーチー・マーシャル)が往年のジョニー・ロットンのイメージと重なってみえてしまってしかたありません。
BandcampやSoundcloudにアップされるようなごった煮の音楽性のビートミュージックを、バンドで演奏しているようなシーンだなと感じていましたが、中心人物であるKing Kruleがラップグループも組んでいるというのを知って妙に納得しました。実際、プーマブルーはラップトップで作ったトラックをバンドで演奏しているみたいです。King Kruleやプーマブルーのバンドはメンバーにサックス奏者を揃え、ドラマーはブラシも使います。この多音楽言語な感覚はまさにインターネット以降のクレオール。そして、キングクレオール(誤字じゃないです)ことアーチー・マーシャルを中心にみると、こうひとつ筋が通る感じがあってプーマブルーの登場も腑に落ちました。
あと、この界隈のアーティストがやたらとチェット・ベイカーの名前を挙げたり、ビル・エヴァンスの少しマニアックな曲を共通して挙げるのはなんでだろう??と疑問に思っていましたが、それもアーティスト同士の距離が近い、コミュニティ内での共通言語だからかと。こんなに影響を受けたミュージシャンの名前が共通していると、これ聴いた?あれもいいよ!とやりとりしてる様が目に浮かびますね。
現地にいないと体感しにくいこの感じははやっかいですが、若いアーティストばかりの南ロンドンシーンはこれからも目が離せません。
もし追いかけるならBalamiiやNTSといったネットラジオがコミュニティ内だけで流通していそうな未発表曲がたくさんかかるのでおすすめです。
出典:
Wikipedia
「King Krule」
「BRIT School」
Pitchfork
「King Krule」
「King Krule: The Wizard of Ooz」
HYPEBEAST 「Growing up With King Krule」
Fred Perry – Subculture
「PUMA BLUE」
「KING KRULE」
「JAMIE ISAAC」
「COSMO PYKE」
Bandcamp
「Words Backwards – Tight Lemon」
「Zoo Kid」
「Sub Luna City – City Rivims Mk 1」
「Rago Foot – Another Man On A Zig Zag Mission」
Spin 「King Krule Shares the Secrets of The Ooz」
metro.co.uk 「Artist of the day 22/06: Puma Blue」
i-d.vice.com
「ロンドン・アンダーグラウンド・ジャズ・シーンの新星、プーマ・ブルー」
「we talk poetry, plays and keeping it honest with loyle carner」
「2, 4, 6, 8… we appreciate loyle carner」
The Independent 「Rejjie Snow interview: The Irish rapper on proving ‘everyone wrong’」
noisey 「Chill the Fuck Out and Listen to Jamie Isaac’s Debut Album ‘Couch Baby’」
DUMMY 「The 10 things that inspired Jamie Isaac’s ‘Couch Baby’」
BONAFIDE 「Introducing: Jesse James」)
NME 「Loyle Carner Interviewed: Grime Changed My Life」
Wonderland 「INTERVIEW: JAMIE ISAAC」
CLASH
「Next Wave #846: Puma Blue」
「Next Wave #734: Jesse James Solomon」
MUSIC CROWNS 「Interview: Jamie Isaac is growing and evolving」)
Wired.jp 「やさしさのクリエイティヴ:アデルを育てた学校で、彼らが学ぶこと」

King Krule「The Ooz」
2013年『英国BBCが選ぶブレイクする新人リスト』においてハイムやチャーチズ等と共に選出され、次世代UKシーンを担う存在として一躍脚光を浴ひた孤高のアーティスト、キング・クルールこと本名アーチー・マーシャル。トム・ウェイツを彷彿とさせる渋くしゃがれたヴォーカルと語りかけるように歌う独特のスタイルでUKシーン現代最高峰の吟遊詩人と評される孤高の天才シンガーである逸材が、キング・クルール名義としては2013年のデビュー作『Six Feet Beneath the Moon』以来、 実に4年ぶりとなる2作目『The Ooz』をリリース!本作でもUKベース・ミュージック~ロックンロール~ブルース~ポスト・ダブステップ~ヒップホップ等多彩な音楽性を全く新しい形に昇華させたサウンドと、それに合わせて歌われるミステリアスで独特な歌詞の世界観が随所に披露された。失われたロマンスと自らがバラバラになっていく様を痛ましい詳細と共に歌い上げ、そこに渦巻くジャズとギターが鳴り響く「Biscuit Town」(M- 1)、愛する街で、心休まる場所を必死に探すが、その願いとは裏腹にひたすら暗いムードが空気を覆い尽くしていく様子を表した「Czech One」(M-11)や「The Cadet Leaps」(M-16)、そしてドラッグが与える高揚感もその状況は打開できない「Emergency Blimp」(M-10)や「(A Slide In) New Drugs」(M-12)など、まるで南ロンドンの壁の割れ目から染み出したかのように、荒涼とした風景や急激に落ちぶれてしまった悲惨な街の様子を巧みな言葉で表現した歌詞が、国を超えて多くの同世代から共感を獲得するであろう傑作がここに完成。
